鹿児島県知事
2006年1月27日
伊藤 祐一郎 様
児童福祉課長
内 明 宏 様
国分・隼人児童クラブ連絡会
事務局/青葉児童クラブ 霧島市国分重久2105-1
TEL/FAX 0995-45-7800
鹿屋・肝属地区学童保育連絡協議会
事務局/寿学童育成クラブ 鹿屋市寿5丁目17-7
TEL
0994-40-0963
2006年度「学童保育(放課後児童健全育成事業)」予算に関しての要望書
貴職におかれましては、日頃より学童保育事業(放課後健全育成事業)の発展のためにご尽力いただき、敬意を表します。
さて、今日、共働き家庭の一般化や一人親家庭の増加、また、子どもが被害に遭う事件が増えるなどの地域での子どもの生活をめぐるさまざまな環境の悪化のなかで、仕事と子育ての両立支援地域での安全・安心な毎日の生活を保障する学童保育放課後児童健全育成事業の必要性がますます高まっています。
2005年5月1日現在、2,033市町村に1万5,309か所の学童保育があり、昨年同月と比べると631か所増えています(全国学童保育連絡協議会調査)。学童保育の法制化(1997年児童福祉法改正、1998年4月施行)後、急激に増えてきてはいますが、2005年はここ数年の伸びから比べると増え方は少なくなりました。次世代育成支援対策で市町村に策定が義務づけられた「地域行動計画」による設置目標が、国の財政措置の見通しがなかったことが原因と考えられます。
入所児童数は急増しており、5年間で20万人以上増えています。2005年は、入所児童数の伸びが、厚生労働省調査でも過去最高になっています。
私たちは、共働き・母子父子家庭など学童保育を必要とするすべての保護者が、安心して子どもを託すことができる学童保育が居住する地域・学区に設置されること、そしてその学童保育においては、子どもたち一人ひとりが放課後(夏休みなどには朝から一日)、居場所と実感できる生活の場が保障されることを願って、よりよい学童保育づくりに努力してきました。
しかし、県内の学童保育は、まだまだたくさんの課題・問題を抱えています。
○ 学区に学童保育のない小学校がある(県内…小学校610校中、学童保育数250か所、設置率は、41.0%で全国平均65.4%以下。)
○ 生活の場にふさわしい施設・設備となっていない学童保育が多数ある、特に最近では、1施設当たりの児童数が急増する「大規模化」が目立っている
○ 子どもの生命と生活を守り親たちの生活を支援する指導員に対して安定した雇用・労働条件が整えられていない
○ 必要にも関わらず入所できない児童(障害児、高学年)がいる
○ 大多数の学童保育が厳しい財政運営を余儀なくされているなど
国および地方自治体が、それぞれの役割と責任を持ち、仕事と子育ての両立支援、次世代育成支援対策に十分に寄与するためには、その柱のひとつである学童保育のナショナルミニマムが制度的に保障されることが絶対に欠かせません。
今後の日本に深刻な影響を与える少子化の急激な進行は、いま抜本的な対策をとらなければ、10年後、20年後では対応できないと言われています。経済界も「仕事と子育ての両立支援の強化が少子化対策に効果的「抜本的な財政措置が必要」と指摘しています。厚生労働」省も「社会保障費のわずか4%しかない子育て支援関係予算」の実態を変えていく必要性を強調しています。いま、だれもが安心して子どもを生み育てながら働ける社会を作っていくことが求められています。
「三位一体改革」による財政措置が不透明ななかで市町村に策定が義務づけられた「地域行動計画」で、学童保育の設置目標は実際の増加数の半分となってしまいました。まだまだ設置数が少ないなかで、この設置目標の見直しが絶対に必要です。
また、2005年度の学童保育予算が当初、厚生労働省の「国として、がんばっているところを応援していきたい」という方針に応えて拡充に努力してきた学童保育や市町村ほど、大幅に補助金が削減されるような内容で、しかも地方自治体が予算を決めた後での提示であり、内容的にも提示した時期の点でも、大きな問題を引き起こすものでした。補助金は結果的に障害児加算や長時間加算が復活するということになりましたが、今後はこうした問題が起こらないよう、地方自治体や関係団体の要望に応えるような予算編成と、変更の場合の周知期間を設けることを強く求めてきています。
全国学童保育連絡協議会では、2003年6月に、国および地方自治体に対して提言「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」(別紙)の実現を要望してきています(すでに埼玉県・岐阜県をはじめいくつかの自治体で作成されています。)が、学童保育の必要性と働く親たちの願いがますます強まっている今日、「かごしま子ども未来プラン」(鹿児島県次世代育成支援対策行動計画)の具体化を図るために、この「運営基準」を策定していただきますよう要望いたします。さらに、「三位一体改革」によって学童保育の水準が後退することなく、いっそう拡充されるよう以下の点を要望いたします。
要 望 項 目
1.2006年度学童保育(放課後児童健全育成事業)予算について
(1) 必要な地域すべてに設置するとともに、待機児が生まれないように補助の対象か所数を増やしてください。
(2)大規模化を解消し、適正規模になるような施策づくりと予算措置をしてください。
(3)障害児の受け入れ推進のための補助金をなくさず、むしろ「障害児1名から」補助が受けられるようにしてください。また、補助額および補助基準は障害児の数に応じて指導員の加配が可能になるようにしてください。基準額は指導員の人件費として予算化してください。
(4)保護者の働く実態に即した開設日・開設時間が設定できるよう予算化してください。
(5)年間を通して指導員の資質の向上、実践に役立つ研修ができるように、研修費補助を予算化してください。
2.要望のあるすべての小学校区に学童保育がつくられるようにするために、下記の施策を講じてください。
(1)学童保育を単独で建てる場合の「児童厚生施設等整備費」を活用できるように予算化を図るなどしてください。 (別紙「学童保育の施設整備に活用できる国の補助金」参照)
(2)同時に、余裕教室を学童保育施設として活用を促すため、及び障害児受入のために既存施設を改修するため、「保育環境改善等事業費」を活用できるようにしてください。
(3)学校施設等を学童保育の専用施設(室)として活用できるように、文部省教育助成局長通知などにもとづいて、教育委員会に対して積極的な指導を行ってください。
3.実効ある学童保育運営に必要な施策の充実について
鹿児島県が作成した「かごしま子ども未来プラン」(鹿児島県次世代育成支援対策行動計画)の実効性をもたせるため、学童保育の実態や要求にあわせた改善をはかるとともに、市町村に対して、「放課後児童健全育成事業…が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努める」(児童福祉法)よう条件整備を図ってください。
(1)全国学童保育連絡会が提言している「学童保育の設置・運営基準」をもとに、「鹿児島県放課後児童クラブ運営基準」(仮称)の作成を行ってください。
(2) 事業の推進にあたっては、行政の都合による「地域の実情に応じて」ではなく「利用者のニーズ」を基本として事業の拡充を図る必要があることを明確にしてください。
(3)学童保育が「保護者が就労等により昼間家庭にいない」児童のための事業として法制化されたことの趣旨と意義、仕事と子育ての両立支援、次世代育成支援対策、男女共同参画社会づくり等の重点施策として政府が強力に推進している旨を、関係機関および行政担当者等に周知徹底してください。
4.厚生労働省に対して、放課後児童健全育成事業を次のように改善するようはたらきかけてください。
(1)学童保育専用の施設(室)の確保と、専任指導員が常時複数・常勤配置できるよう、国として最低の基準と財政措置を明確にしてください。
(2)現行施策=放課後児童健全育成事業を次の点で改善を図ってください。
@補助の対象箇所数を増やすこと。
A人件費はすべての学童保育で常勤職員で複数分を予算化すること。
B指導員の実践の向上に役立つ研修ができるように研修費補助を増額すること。
(3)「三位一体改革」の動きを受けて厚生労働省は、今年度当初、補助金の仕組みの改悪を進めようとしました。(別紙「2005年度の学童保育の補助金(運営費)について」参照)
“頑張っている”自治体を励ます現行の補助金の仕組みを維持するよう、県として国にはたらきかけてください。
以 上