鹿児島県県知事                                                         2004年2月25日

  須 賀 龍 郎 様

 児童福祉課長

                  

国分・隼人児童クラブ連絡会

  代表委員  永島 静代(国分市)

       上村 博一(隼人町)

              続  博治(隼人町)

    

児童クラブ(放課後児童健全育成事業)運営に関する予算拡充に関する要望書

 

児童クラブ(学童保育)へのご支援・ご協力に心より感謝申し上げます。

学童保育が児童福祉法に放課後児童健全育成事業として規定されてから6年目を迎えました。こうした中での『必要な地域すべてに放課後児童の受け入れ本制を整備します』との小泉首相の200157日の所信表明槙説は、長年学童保育に挑わってきた私たちにとって大いなる励ましとなりました。やっと国も本腰を入れて学童保育に取り組むことについては率直に評価したいと思います。

事実、20013月には厚生労働省は全国児童福祉主管課長会議で「全児童を対象とする事業に対する放課後児童健全育成事業の国庫補助の取り扱いの基本的な考え方」という学童保育「基準」を初めて示しましたし、都道府県と指定都市、中核市の民生主管部(局)長に対して「放課後児童健全育成事業の一層の推進について」という通知を出しました。そして2003年度も、放課後児童クラブ専用施設建築のための補助金も予算化されました。しかし、こうした国の積極的な姿勢を評価しながらも、学童保育をめぐる依然として厳しい現状にも目を向けざるを得ません。

鹿児島県では現在62市町村で196ヵ所の学童保育所が設置されています(全国学童保育連絡協議会調べ)。これは小学校数での設置率は35.1%となっており「必要な地域すべてに」というには程遠い実態です。また、既に学童保育が実施されている市町村においても、近年の経済情勢や労働法制の規制緩和で、保護者の労働実態がさらに悪化し、学童保育を終えてもなお、一人や兄弟姉妹だけで保護者の帰宅を長時間待っているのが現状であり、学童保育と保護者の労働実態との乖離(かいり)がますます顕著になっています。

また昨年度からの学校週5日制で土曜日保育の必要性が高まっていますが、国からの補助金では指導員の人件費もまかなえず、新たに保護者が費用を負担しています。

「子育てを家庭の中だけでなく、地域で協力し合い、社会全体で支援していく」ためにも、学童保育の設置および充実は子育て支援策の大きな柱の一つです。

ところで、日本は急激な少子高齢化社会に向かっています。2000年をピークに日本の人口は減少し、2000年に118万人いた新生児は、2050年には半減すると予測されています。こうした急激な少子化を食い止めようと、政府は1984年にエンゼルプランを立て、1998年には新エンゼルプランを立てました。しかし、少子化はいっこうに止まらず進行しています。

そのため、いま政府は二つの新しい法律(少子化社会対策基本法と次世代育成支援対策法)をつくり、更に児童編祉法を改正して、少子化対策・子育て支援を進めようとしています。

少子化社会対策基本法は少子化対策の必要性を明らかにし、基本理念を定めています。保育と学童保育を「保育二―ズ等」の中に位置づけ、拡充のために必要な施策を講じる明記されています。

次世代育成支援対策推進法は、すべての市町村(及び都道府県)に児童育成・子育て支援のための「行動計画」を立てることを義務づける法律です。2005年度から2014年度までの10年間に推進すべき児童育成・子育て支援計画を、すべての市町村(及び都道府県)が20053月までに策定することを義務づけています。

また、児童福祉法一部改正は、すべての子育て家庭への支援を狙いとする「子育て支援事業」を法制化して都道府県・市町村が積極的に推進すること、保育所の待機児童が急増している市町村は「保育計画」を立てなければならないとする内容です。ちなみに学童保育も「子育て支援事業」として位置づけ、「着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めなければならない」と市町村の責任を明確にしています。

そして政府は、市町村や都道府県に「地域行動計画」策定までのスケジュールを示し、「地域行動計画」を策定するための「策定指針」と「策定マニュアル」を8月に策定し、市町村・都道府県に早急に計画づくりに取り組むように指示をしています。

もはや、少子化対策は待ったなしの現状です。鹿児島県及び全市町村の「地域行動計画」に積極的な学童保育への取り組みが明記されることを期待しつつ、以下の8項目にわたる具体的な要望をします。どれも緊急に実現しなければならないものばかりです。

どうか私たちの切実な要望に応えていただきますよう心よりお願いします。


要 望 項 目

@次世代育成対策支援推進法に基づく「地域行動計画」の策定にあたっては、学童保育に子どもを預ける保護者の声を反映し、学童保育充実を図ってください。

県における「地域行動計画」策定では、学童保育を運営・推進する私たちの声を直接聞く場を設けてください。次世代育成支援対策推進法で明記されている「地域協議会」を設置し、その中に学童保育の保護者・指導員を加え、学童保育の充実を図るよう、市町村に指導してください。

 

A市町村への指導の強化を図ってください。

少なくはなっているものの、依然としていくつかの市町村では学童保育への認識が甚だしく欠如し、保護者や指導員に対してまともな対応をしません。このことが学童施設の不備や小学校との摩擦を生み出しています。実態を把握の上、市町村への指導の強化を図ってください。

 

B子育て支援・少子化対策の観点から母子・父子家庭への保育料負担軽減のための財政支援をしてください。

母子家庭は母親が一家の働き手であり、厳しい労働条件のもとに働いており、学童保育は絶対の条件です。とりわけ2002年8月から児童扶養手当の減額が行われ、母子家庭には大きな影響が出ています。早急な財政措置が求められます。

 

C指導員研修会の継続と充実を図ってください。

県主催の指導員研修が行われていますが、自治体担当者も含めた学童保育内容充実を目脂した研修会になるよう引き続き要望します。

 

D指導員が安心して働ける条件整備をしてください―そのための調査をしてください。

未だに多くの学童保育所では指導員の身分が不安定で、労災・雇用保険が整備されていません。これでは、指導員は安心して働けないのが現状です。現在の保護者会運営では、財政が不安定なため・労働保険(労災・雇用保険)をつけることができません。この結果労働基準法に沿った有給休暇の取得も困難です。これは労働基準法で認められている学童保育指導員の権利を侵告するものです。現状を把握するための調査と財政支援をしてください。

 

E障害児を受け入れている学童保育所への人件費加算と障害児入所の促進を図ってください。

障害児入所に伴う指導員の増員では、保護者が大変な思いをして市町村に掛け合い、補助金を得なければなりません。いくつかの市町村は独自で補助金を支出しています。

県は障害児入所の促進を図るとともに、障害児入所に際しての指導員増員に伴う具体的な予算措置をとってください。―2003年度からは1保育所2名で年間696,OOO円ですが、これでは専任の指導員も配置できません。

 

F保護者の労働実態に合った学童保育にしてください。

全国連絡会議の保護者アンケートから、日勤が減り、変則な勤務や土日勤務の保護者がさらに増え、保育時間の延長や学校週5日制に伴う土曜保育が必要になっていることが明らかになってきています。

鹿児島県は厚生労働省が示した「全児童を対象とする事業に対する放課後児童健全育成事業の国庫補助の取り扱いの基本的な考え方」という「基準」にそった学童保育の確立に向け市町村に指導するとともに、保育時間延長や土曜保育が実現可能となる鹿児島県独自の補助金をつけてください。

 

G施設整備費のための補助金をつけてください。

少子社会を迎えたとはいえ、現在の経済・雇用情勢のもとでは学童保育の需要は伸びてきています。

国にあっては、学童保育の専用施設整備のための「子育て支援のための拠点施設整備費」を2003年度から補助金交付要綱を変更しています。これまでの補助の上限であった「80.3u」はなくなり、その程度に該当する金額を上限とすることになっています。(都道府県によって補助単価が違うが約1200万円前後となる)

県内のいくつかの学童保育所では補正予算に続き、昨年度「子育て支援のための拠点施設設備費」で施設の拡充や新設が図られています。

しかし依然として、施設の拡充や新設が急務です。そのための補助金をつけてください。

 

以 上